・調剤薬局を起業するにはどんな方法があるか知りたい人
・それぞれの方法の特徴や難易度を知りたい人
大きく分けると4つの道筋に大別される
熱意を持って仕事をしている薬剤師の方だと、こんなことを思った事があるかも知れません。
「独立して自分の調剤薬局を立ち上げてみたい」
気持ちはすごく分かります。
勤めていると日々感じますが、自分の理想と違う事が多々起きるんですね。なぜ理想通りいかないのかはまた別の問題なんですが、この記事では独立の希望を叶えるためにどんな道筋があるのか、その方法と難易度を探っていきたいと思います。
ここでは私がこれまでの経験で知り得た、独立を叶えた方の代表的な4つの独立パターンを取り上げていきます。
MRとして勤める中で医師から誘われ独立
調剤薬局の現場で働きながら独立を希望する薬剤師には多少ショックな話かも知れませんが、個人で独立を叶えた方で一番多かったのはこのパターンです。
MRは職業の特性から医師と密接に関わる事が多く、優秀な担当者であれば、医師のプライベートなことまでも把握し気遣いのできる方も少なくありません。
長い場合には10年〜20数年のお付き合いをする中で、調剤薬局の開業を希望する医師がまず思いつく薬剤師が、長年担当し支えてくれたMRである事は非常に多いです。
現場の薬事師からすると調剤薬局の実務に関しては絶対の自信がありますので、MRが開業なんて本当にできるのかと疑いたくなりますが、実際には全然可能です。
むしろ独立開業する上で重要なのは、医師との連携であったり、金銭フローの管理であったり、銀行など融資先との関係構築であったりと、具体的な調剤スキル以外のことが重要になってくるケースが多いです。
現場の薬剤師が疎かにするのはここで、日々の業務を理解していれば独立開業も大丈夫だろうというのは間違いなんです。むしろ日々の薬局運営は時間をかけて現場で勤め上げ習得するよりも、経験のある方を採用してまかせてしまうほ方が解決が早いという訳です。
フランチャイズ オーナーとして独立
フランチャイズ の形態で独立する薬剤師も実際にいます。
チェーン薬局の中にはこのフランチャイズ 形態で将来独立ができることを謳っている企業もあります。
難易度としては一番ハードルが低く、一見するとこの方法ならうまくいきそうな気もしますが、現実的には難しいケースも多いようです。私が社会人になって初めて就職した最大手の調剤薬局もこのフランチャイズ での独立を掲げていましたが、実際には数百店舗の中で1店舗だけでした。
中国地方で50店舗ほど経営されている社長さんと知り合えて、このフランチャイズ での独立について見解を聞いたんですが、例えば管理薬剤師の人件費を含めて月50万円程度の利益が出ている店舗であれば、薬局オーナーが手放す事はまずないよ、とのお話でした。
このチェーン薬局オーナーに、50店舗ほど店舗展開する中でフランチャイズ として経営を譲渡した店舗はどんな店舗ですかと聞いたところ、こんな回答でした。
その企業は約50店舗の中で1店舗のみフランチャイズ として経営を譲渡していたのですが、その店舗は超僻地にあり、ご夫婦で薬剤師として薬局運営をされているそうです。その地域では何年も薬剤師を募集しても転職希望者は皆無で、他店舗からも相当の距離があり、応援体制を取ることが難しい事、利益はギリギリ取れているが、医師が超高齢であり、かつ後継も不在で、いつ引退されてもおかしくない事。しかしながら地域で他の薬局が少なく、また固定の顧客がついているため、薬局を閉めることもできないことが原因でした。夫婦薬剤師での運営だったので欠員のリスクがないこともフランチャイズ化を後押しした要因のようです。
フランチャイズ での独立は条件が合致することが難しく、合致したとしてもフランチャイズ 料の問題が常につきまとうため、狙って成功させるのは少し難易度が高く、うまくいった方の方法を真似ようとしても再現性が低いかも知れません。
個人経営の薬局での従業員事業承継
次に従業員承継のパターンです。
個人経営の企業オーナーが引退する際に、従業員に事業を引き継ぎたいと考える場合があります。
自分が成長させてきた会社を閉めるのは忍びないし、どこの誰かわからない人に引き継ぐのも不安と言った場合にこの選択肢がとられます。話としては理解しやすいのですがこの従業員承継でも様々な問題が発生するリスクを孕んでいます。
・誰に事業を承継させるのか:社内で優秀な人材が複数名いた場合、派閥争いを引き起こす可能性がある
・承継の意思がある人がいない:会社員は安定を求めて企業に就職している場合が多く、独立開業のリスクをとれる人材が不在である
・事業を承継させる人材がいても資金がない:事業を承継させることができて独立の意思がある社員がいても、会社員として働いている社員が、事業を買い取るだけの資金力を持つことが難しい
などがよく起きがちな問題です。
手順としては前オーナーが現役中に、事業を承継する社員を計画的に幹部登用して、取引先への紹介をしながら、経営状況の引き継ぎや資金調達の援助、その他従業員への周知を数年かけて行う場合が多いです。
調剤薬局の買取、個人M&A
最後に調剤薬局の買取、個人M&Aのパターンです。
皆さんはご存知でしょうか、会社って売ってるんです。買えるんです。
もう少し詳しく分けると、株式譲渡で事業の全てを引き継ぐ場合と、経営権の譲渡に大別されます。
いずれの方法を取るにしても、かなりの資金力が必要となり個人でこれを行うためには相当のリスクを伴うこととなります。薬局の日々の運営スキルを磨きながら、同時に事業承継に関する勉強も相当量こなさなければなりません。簿記の知識や、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を読み解くことができると言った事は基本となってきます。その上でその買取たい事業のデューデリジェンス(稼ぐ力の査定)を行わなければなりません。
こう言った手順がわからなければまずは勉強からということになります。
いきなり高額なセミナーなどに参加する必要はありませんので、役に立つ書籍を別記事で紹介したいと思います。
https://www.pharmacist-life.tech/another20/いずれの方法でも難易度は高い
個人の力で独立を果たすのはいずれの方法をとっても難易度が高いものとなっています。
しかしながらその努力に見合ったやりがいや報酬が得られるのもまた事実です。
みなさんの薬剤師人生のキャリアアップのゴールの1つとして、独立開業を意識しておくことも人生を好転させるきっかけになるかも知れません。
最後に。
みなさんの転職が人生を好転させる実りあるものになることを願っています!