2022年(令和4年)4月の診療報酬の改定で、錠剤の分割に関する自家製剤加算の要件が変わったと聞きました。
私でも分かるように、シンプルに教えてほしいです。
調剤報酬の原文は、図解や表なども少なく一度見ただけで完全に理解するのは難しいものです。
実務に即役立つものとして、錠剤を半錠にする場合の自家製剤換算も日々悩むところですので解説します。
・〜2022.3.31までと2022.4.1〜の変更点を表にまとめました。
・「錠剤を分割する」行為の定義が変わっています。
・今までの地域差(ローカルルール)は今後どうなるか
・「割線ある錠剤を〜」の文言が削除された
・「錠剤を分割すること」の定義が明確化された
・地域による支払側の解釈の違い、いわゆるローカルルールがなくなっていくかが今後のポイント
(熊本・福岡では電話で社保・国保ともに同一見解であった)
毎日の作業なのでスタッフでもう一度、加算の算定についてミーティングを実施して、算定漏れがないようにしていきます!
ポイントは2つ
まずは薬剤調製料(注6の自家製剤加算について)どう変わったのか表をご覧ください。
【自家製剤加算】 旧:〜2022.3.31まで | 【自家製剤加算】 新:2022.4.1から〜 |
(1)に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)、それぞれ次の点数(予製剤による場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20 に相当する点数)を各区分の所定点数に加算する。ただし、別に厚生労働大臣が定める薬剤については、この限りでない。 イ 内服薬及び屯服薬 (1) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬 20点 (2) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の屯服薬 90点 (3) 液剤 45点 ロ 外用薬 (1) 錠剤、トロ-チ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 90点 (2) 点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 75点 (3) 液剤 45点 | 注6 次の薬剤を自家製剤の上調剤した場合は、自家製剤加算として、1調剤につき(イの(1)に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)、それぞれ次の点数(予製剤による場合又は錠剤を分割する場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)を各区分の所定点数に加算する。ただし、別に厚生労働大臣が定める薬剤については、この限りでない。 イ 内服薬及び屯服薬 (1) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬 20点 (2) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の屯服薬 90点 (3) 液剤 45点 ロ 外用薬 (1) 錠剤、トロ-チ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 90点 (2) 点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 75点 (3) 液剤 45点 |
[留意事項] (11) 自家製剤加算 オ 割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、錠剤として算定する。ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。 | [留意事項] (11) 自家製剤加算 キ 「錠剤を分割する」とは、医師の指示に基づき錠剤を分割することをいう。 ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。 |
で、結局どう変わったのって話なんですが。
ポイントは大きく2つです。
「割線ある錠剤を〜」の文言が削除された

まず最初のポイントです。
〜2022.3.31まで記載されていた、
割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、錠剤として算定する。
の文言が削除され
「錠剤を分割する」とは、医師の指示に基づき錠剤を分割することをいう。
に置き換わっています。
実はここ大事なところで、これまでよく議論に上がっていた「割線のありなし」論争に終止符が打たれた形となりました。
錠剤に割線があるように見えるが実はこれが「割線」であったり「デザイン上のもの」であったりと、添付文書を確認してくださいねといった議論が今までありました。
実際には必ずしも「割線がない」などの理由だけで、自家製剤加算を算定できないわけではなかったのですが、地域によっては添付文書上の割線が重要視されるケースも残っており、いわゆる地域差(ローカルルール)が存在していました。
この「割線」の文言が無くなったのが、まず最初のポイントです。
「錠剤を分割すること」の定義が明確化された
2番目のポイントは「錠剤を分割すること」の定義が明確化されたことです。
「錠剤の分割」とは『医師の指示に基づき錠剤を分割すること』とはっきり明記されています。
2022.4〜からの自家製剤加算の文言には
薬剤を自家製剤の上調剤した場合は、自家製剤加算として、1調剤につき(イの(1)に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)、それぞれ次の点数(予製剤による場合又は錠剤を分割する場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)を各区分の所定点数に加算する。
2022年度診療報酬改定
とありますので、この「錠剤を分割する」の定義が重要となってくるのです。
結局、今回の改定の目的は何?
結局今回の自家製剤加算の変更点は何を目的としたものなのでしょうか。
ここからは私ねこちちの私見も入ってきます。
点数の引き下げが目的?
これって結局収入減ってことか、、、、
というのが現段階での私の見解です。
どういうことか具体的に計算してみましょう。
割線がなくても加算が取れるが、点数は引き下げられれいる
【自家製剤加算】 旧:〜2022.3.31まで | 【自家製剤加算】 新:2022.4.1から〜 | 調剤薬局の収入 | |
割線ありの 錠剤 | 算定可 7日ごとに20点を算定 | 算定可 所定点数20点を20/100にし、 小数点以下を四捨五入した点数を算定 20点の20/100=4点なので 7日ごとに4点を算定 | 収入ダウン (大幅減) |
割線なしの 錠剤 | 算定不可 | 同上 7日ごとに4点を算定 | 収入アップ (微増) |
今までは20/100に減算されるのは、半錠を予製していた場合のみでしたが、今回の改訂から予製していた場合のみに加えて、錠剤を分割する場合も20/100に減算されるとはっきり明記してあります。
今まで半錠は割線なしのものばかりだったという薬局は別ですが、錠剤の分割に限って言えば、今回の改定はほとんどの薬局とって収入ダウンの改定と言えそうです。
薬学的に問題がないことは当然確認する

この段落では半錠の可否について確認していきます。
経験の豊富な薬剤師の方には、当たり前のことですので読み飛ばしてもらって結構です。
半錠する場合には薬学的に問題がないことを確認することは当然です。でないと薬剤師の存在価値がないですからね。
基本的な二つのケースを例にあげます。
徐放性錠剤
徐放性錠剤は半錠不可のケースが多くなってきます。
まだ現場に慣れていない薬剤師の方は、錠剤の名称からもある程度推測ができますので、以下の表をご参考ください。
錠剤名称後のアルファベット略語 | 意味 |
R | Retard(遅らせる) |
CR | Controlled Release(放出をコントロールする) |
SR | Sustained Release(放出を持続させる) |
L,LA | LongActing(長く効く) |
半錠や潰しによって急激な血中濃度上昇などが起こり、有害事象の引き金となりますので薬学的に半錠は不適となります。
腸溶性錠剤
腸溶性錠剤も半錠が不適のケースが多いです。
胃で溶けずに腸で溶けるように錠剤のコーティングが施されています。
半錠や潰しにより、効果不十分もしくは効果なしとなってしまいますので、薬学的に半錠は不適となります。
日々の業務の見直しが必要
今回の改訂に伴って、まずは自分の薬局の半錠の業務の見直しが必要です。
業務が多忙の場合は、全部いっぺんには難しいこともあると思うので、労力対効果が大きいところから見直していきましょう。
まずは日常的に分割している錠剤の確認
まずは日常的に分割している錠剤の確認をすることから始めましょう。
特に割線のない錠剤を日常的に半錠にしている場合、今までは全く加算はとっていなかった場合もあるかもしれません。
薬学的に問題がなければ自家製剤加算(7日ごとに20点の20/100=4点)の算定を始めていきましょう。
今まで通りの業務で、収益がなかったところに収益が発生しています。
薬局で少数にしか処方されない分割処方も見直し
次に、薬局で1〜2名程度の少数の方に限定的に半錠して調剤している薬剤についても見直しをしていきましょう。
わずかな点数ですが、今後の薬局運営はこのわずかな点数を地道に積み重ねていくことが生き残りを図る上で重要となってきています。
以上、2022年診療報酬改定の中から錠剤の半錠にフォーカスした記事でした。
今後も現場で役立つ情報をシェアして参りますので、よろしくお願いいたします。