調剤薬局で働いてきたんですが、病院薬剤師として働くことに興味があります。お給料や業務内容など実際はどうなんでしょうか。
調剤薬局の薬剤師と病院薬剤師では業務内容や給与、扱う薬まで様々な違いがあります。
調剤薬局の管理薬剤師 ⇨ 病院薬局長 ⇨ 調剤薬局のエリアマネージャー
と転職経験のある私の実際の所見を紹介することで、異業種への転職の不安を解消します。
特にこの記事では調剤薬局⇨病院薬剤師への転職といった視点で記事を展開していきます。
・薬剤師として病院でしか経験できないこと
・給与はどうなったか
・取り扱う薬の違い
・業務内容や勤務時間の違い
病院薬剤師として働くのには目的や使命感が重要。給与や休日数など待遇ばかりを気にする薬剤師には不適なケースも多い。
病院薬剤師でしか経験できないことを学ぶべき。
一生病院ではなく、キャリア形成の中で一時的に経験を積みたい場合は20代〜30代半ばまででの勤務がおすすめ。
自分はまだ20代。薬剤師としてスキルアップを重視します。
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調剤薬局から病院薬剤師への転職はありか
結論です。
自分を年代や目的意識を確認した上でなら「あり」です。
病院薬剤師でしか経験できないことがあり、その経験は調剤薬局で活かせます。そして病院薬剤師の経験がある薬剤師は、調剤薬局の中で希少価値があります。
目的意識をしっかり持とう
まず一生病院薬剤師として過ごすと決めている人は、悩む必要はありません。すぐに病院薬剤師への転職活動を始めてください。早く動いた人からいい条件に出会えるしチャンスを掴めます。
しかしながらこのページを見てくださっている方は、薬剤師としてのキャリア形成の中で一時的に病院薬剤師を経験したいと考えられている場合が大半なのではないでしょうか。
病院薬剤師として勤務する場合は調剤薬局での薬剤師とは違う視点が必要になってきます。目的意識を持って転職活動をスタートさせることをお勧めします。
間違っても「ドラマに憧れて」なんて軽い気持ちで転職しないようにしてくださいね。
給与や休日には変化があるので事前にしっかり確認しよう
給与や休日にも変化が生じます。
給与は多くの場合は下がる傾向にあると思って間違いありません。理由は後述します。
休日に関しても調剤薬局は通常は休みの日が固定されており、ある程度決まった日程での勤務を求められます。
しかしながら病棟を抱える病院では、24時間365日、入院患者を意識した働き方が求められます。
私の経験ではゴールデンウィークや年末年始などの大型連休も、スタッフのうちの誰かが交代で出勤し、病棟への薬の払い出しなどの業務を行なっていました。
また夜勤はありませんでしたが、夜間に医師や看護師が薬の払い出しができるようマニュアルや医薬品の払い出し帳簿の管理を求められていました。
公的な病院や地域の基幹病院、救急外来に対応する病院になると、実際に夜勤も発生します。
なぜ給与や休日など変化があるのか
なぜ給与や休日の撮り方に違いが出るのか理由を説明します。
入院患者は24時間・365日、病棟で薬を待っている
調剤薬局では、在宅から通院中の外来患者に薬を払い出すだけですが、病院ではこの外来患者対応に加え、病棟の患者へも薬の払い出しが発生します。
実際には病棟の看護師へ薬を渡すことになるのですが、病棟のナースステーションには大量の医薬品をストックすることはできません。保管管理の理由もありますが、大量の輸液などは場所の確保も難しいのです。
そしてこの医薬品の払い出しの業務は24時間365日求められます。
私も勤めた病院では大型連休の出勤者には特別手当が支給されたので、比較的不平等感は少なかったのですが、やはり調剤薬局に比べると、家族との予定や友人との予定の調整は難しくなる傾向にあります。
調剤報酬 ⇨ 医科報酬 へ考え方を切り替える
給与に関してはそもそも病院薬剤師と調剤薬局の薬剤師では、報酬の源泉となる診療報酬体系が異なります。
病院薬剤師は医科報酬の中で業務を行うので、給与が上がりにくい仕組みになっています。病院の中には薬剤師だけではなく、医師・看護師・放射線技師・検査技師・作業療法士・栄養士など様々な専門の職種が存在し、給与を分配するからです。
調剤薬局内での専門職は薬剤師が中心になってくるので、給与が上げやすくなる訳です。
具体的な変化

では実際にはどんな変化があるのでしょうか。
私の経験からのお話を記述します。
給与の変化
私の経験です。
29歳、男性、大手チェーン調剤薬局の管理薬剤師 ⇨ 病院薬剤師 への転職です。
年収は580万円 ⇨ 550万円 と30万円のダウンでした。
この時の転職は自分の足で病院を探して、転職エージェントの活用はしませんでした。
その結果的には薬局長となり、段階的に給与をあげ33歳で650万円まで給与を上げることができました。
詳細は別記事をご参照ください。

勤務時間や休日の変化
私の勤務した病院では9:00〜17:30の短い勤務で1日勤務扱いだったので比較的早く帰宅することができる職場でした。職場も近く18:00前には自宅に着いていることも良くありました。
薬歴の記載などで残業が多い調剤薬局との大きな違いと感じています。
大型連休の際には薬剤師が交代で出勤する必要があったので、プライベートの予定の立て方にはある程度影響がありました。特に薬局長の立場もあり、スタッフが誰も出勤できない場合などは出勤を余儀なくされる場面もありました。
年間休日は109日となっており、待遇的にはボリュームゾーンに入っていたと思います。
年間の休日日数は、調剤薬局であれば多いところでは130日程度のところもあるので、休日日数を求める場合は病院薬剤師は不利になってくる場合が多いです。
業務内容の変化
日中は外来患者の対応と入院患者の対応と分かれて業務を行いました。
外来対応の場合は必要に応じて患者さんに薬の説明をしますが、薬歴記載の義務はなく、この点から残業の発生は少ない傾向にありました。
取り扱う医薬品は輸液やアルブミン製剤など調剤薬局では取り扱わないものの知識も求められますし、薬の説明をする対象は患者さんだけではなく医師や看護師への説明も求められますので、より専門的な知識を求められます。
輸液の投与ルートや配合変化の知識、医師からの処方設計の相談などは調剤薬局の薬剤師では経験することが少ない業務となります。
病院薬局長になるとさらに特殊な経験ができる
また病院の薬局長としての勤務を経験したので、医師や看護師を含む医療従事者への研修を企画・実施したり、各種委員会への参加も求められました。
栄養管理や感染制御の分野では当然出席を求められますし、病院の中で人件費にならぶ大きなコストの医薬品を取り扱う部署なので、経営委員会でも数値報告を求められました。
特に毎月の薬事委員会では医局医師たちと採用医薬品の決定などを司会進行する必要があり、この経験から医師や看護師、検査技師など他の専門医療職の方と薬剤師として関わる能力が求められました。
調剤薬局と比べ、医療の中での専門職としての薬剤師の能力を求められます。症例検討会などでは薬剤師としてどの薬剤選択が最適かなど意見を求められました。
病院薬局長になれれば、また特別な経験を積むことができる
結論、年代や目的意識による

結論です。
調剤薬局の薬剤師としてやっていく上でも病院薬剤師の経験がある人材は希少価値がありアドバンテージが取れます。
しかしながら給与や休日などの条件も変わる場合が多いので、自身の年齢や結婚出産などのタイミング、目的意識によって適不適を考える必要があります。
年齢が上がってからの給与を上げる転職は難しい
おすすめの経験の仕方としては30代半ばまで、できれば20代のうちに病院薬剤師の経験を積むことは、薬剤師としてキャリアアップする上で有益です。
理由としては、人生の後半で給与が上がらない、もしくは給与を下げる転職はリスクが高いことが挙げられます。
そして一度下がった給与を、再び元の水準に上げる転職は、年齢が上がるほど大変になってきます。
どの年代での転職も元の職場での給与は参考にされる傾向があるからです。
個人的なおすすめは若いうちに病院薬剤師を経験すること
病院薬剤師としての経験が薬剤師としてキャリアアップに有益であることは間違いありません。
絶対的なアドバンテージとしてはカルテを参照できることです。この業務だけはどんな調剤薬局でも絶対に経験できないことです。
カルテの情報にアクセスできることは、医療者としてのスキルを必ず高めてくれます。医師がどういう理由で薬剤選択をしているのか、急性期から慢性期・その先の在宅まで患者さんがどういう流れで治療を進めるのか。
医療の全体の流れを広く深く勉強することができます。
調剤薬局での医療への関わり方は、医療全体のほんの一部であることが理解できます。
もしあなたが薬剤師としてさらに飛躍したいのであれば、調剤薬局から病院薬剤師への転職は選択肢の一つに入れて間違いありません。
失った時間だけは誰にも取り戻せんません。病院薬剤師としての業務に興味があるのであれば、そういった求人に強いエージェントも存在しますので、後悔のないキャリアアップを果たしてください。
非常に稀ですが、病院薬局長の求人がでることもあります。

最後に。
あなたの転職が人生を好転させる実りあるものになりますように。