2022年(令和4年)4月の診療報酬改定後、処方箋にはリフィル処方可の欄が設けられましたね。
医療機関によってはこれが二重線で消してある場合と、そのまま空白の場合があります。
二重線で消してある病院は、絶対にリフィルをしたくないという意思表示でもしているんでしょうか。
みなさんの調剤薬局ではもうリフィル処方箋は応需されましたでしょうか。
このいよいよ始まったリフィル処方箋の制度ですが、やはり実務にあたっていると様々な疑問が生じてきます。
今日は処方箋のリフィル可の文字の二重線での取り消しについて記事にしていきます。
・リフィル処方箋の概要
・リフィル不可の場合の取り決めが置き去りになっている
・現状どんな対応が好ましいか
リフィル処方箋は病院の主導で発行しないというのは趣旨に反している。
患者希望に応じて医師がリフィル の可否を判断すべき。
ただ現状、リフィル不可の場合の取り決めがなされていないので、二重線での取り消しは致し方ないところ。
二重線での取り消しに納得がいきました。ちゃんと偽造防止という意図があったんですね。
制度の趣旨を正しく理解して業務に役立てていきます。
リフィル処方箋の目的
いよいよ始まったリフィル処方箋の制度ですが、みなさんの調剤薬局ではもう応需されましたでしょうか。
私も実際に始まってから気がつきましたが、リフィル可の場合の応需の仕方については議論が進んでいますが、リフィル不可の場合の取り決めは全く考えていませんでした。
この記事ではリフィル処方の可否の判断とリフィル不可の場合の処方箋の発行について深掘りしていこうと思います。
制度の趣旨にも関わることですが、リフィル処方箋は患者の希望に基づいて医師が判断しその可否を決めることが大前提です。
医療機関単位で発行「する」「しない」を決めることは不適です。
例えばですが
うちのクリニックは(金銭的な)メリットがないので、患者さんがリフィル処方箋を希望しても発行しません!
と言ったことは本来は認められません。
まあこの辺は本来同時に議論されるべき医師の技術料の引き上げが置き去りになっているので、気持ち的には理解はできます。
しかしながら本来の目的である患者の利便性の向上と国民医療費の引き下げについては、共通目的として、制度を周知させていかなければいけませんね。
リフィル可の場合の取り決め
当たり前と言ってしまえばそうですが、改定前からリフィル処方箋を発行する場合の取り決めは議論が進んでいました。
皆さんの調剤薬局でも実際に応需したときのために、ミーティングやシュミレーションを実施したと思います。
処方箋原本の保管管理の方法から、患者さんが処方箋を無くしたときの対応や、薬歴記載・処方入力の仕方など、医療従事者側ではずいぶん周知が進んできているように思います。
先日はQ&Aでリフィル期間内に保険の変更があった場合など、特殊なケースへの対応も分かってきましたね。
リフィル不可の場合の取り決め
少し調べてみましたが、リフィル不可の場合の取り決めは全く進んでないようです。
何も書かなければいいのでは、という意見もあるようですが、医療機関によっては
「リフィル可 □ ( 回)」の記載を
「リフィル可 □ ( 回数)」
とわざわざ消して発行されているところもあります。
実際にはどういう対応が正しいのでしょうか。
一番の目的は偽造防止
リフィル不可の場合の取り決めをはっきりさせるべきいちばんの理由はなんと言っても偽造防止です。
リフィル処方箋の発行を簡素化したことが仇となっています。
リフィル可の場合の取り決めは進んでいる
リフィル処方箋の発行自体は簡単です。
今回から始まったリフィル処方箋は通常の処方箋に
「リフィル可 □ ( 回)」
の記載が追記されただけです。
ここにレ点と回数を記入するだけで、通常の処方箋がリフィル処方箋となってしまいます。
リフィル不可の場合は取り決めなし
レ点と回数の記載だけなので、医師以外の専門職でない場合でもボールペンで簡単に記載ができますし、その記載が実際に医師によってなされたものかの判別は極めて難しいのが現状です。
今のところリフィル不可の場合の取り決めはまだ決まったものはありません。
厚生労働省からの通知も来ていないのが現状です。(令和4年5月現在)
どんな対策が想定されるか

ではリフィル処方箋の偽造防止にはどんな対策が有効なのでしょうか。
簡単に考えられる対策は以下の2点です。
医師の押印(現実的ではない)
まずはリフィル処方箋を発行する場合には、リフィルの回数欄の横に医師の押印を求めるやり方です。
しかしながら医科報酬ではリフィル処方箋の発行に関しては病院側の技術料のアップなどは議論が置き去りになっている状況もありますので、これ以上の医師の業務負担はおそらく進んでいかないと思われます。
それでなくても現在の処方箋は、処方薬以外の記載のルールが増えすぎて、肝心の処方薬を記載する欄がどんどん狭くなってきています。
個人的には処方欄をこれ以上狭めることは相当慎重に進めていかないといけないと感じています。
処方箋への書き加えは有印私文書偽造の罪となる
そこで考えられたのが 「リフィル可 □ ( 回)」 の欄を二重線で消して処方箋を発行する手法です。
病院によっては手書きで修正を加えているところもありますが、システムベンダーによっては標準の機能としてここを二重線で訂正して発行する機能が備わっているところもあります。
これによって、ほとんどあり得ないとは思いますが、患者さん本人による通常処方箋のリフィル化を防止することができます。
ちなみにですが、処方箋への医師以外の書き加えや修正は「有印私文書偽造」と言って立派な犯罪ですのでご注意を。
しかしながらシステム上は一律にこの欄が二重線で消されてしまうので、ここにも問題が発生してしまいます。
リフィル処方箋の原則は患者の求めに応じて医師が個別に判断をしなければならないからです。
一律にリフィル処方箋を発行しないといった医療機関のスタンスは問題となり得ます。
結論と今後の問題点
結論です。
ルールが決まっていない現場では、処方箋発行元によるリフィル欄の取り消し記載が最良の方法と思われます。
現場では二重線での取り消しが安全策か
「リフィル可 □ ( 回数)」
の記載をしておくことで、(ほとんどあり得ませんが)患者さんによる偽造や医師への押印の要請を回避できます。
現状ではこれがいちばん簡単な方法ですが、今のところ厚生労働省からは正式なルールは通知が来ていません。
今後の課題
今後はリフィル処方箋の発行が認知されてきた場合は、技術料の取り決めなどで医療機関側にインセンティブを持たせていくことや、リフィル不可の場合の記載方法の取り決めなどが望まれています。
今後は薬剤師は医療従事者の一人として制度の趣旨を正しく理解して、本来の目的に沿った制度の利用を進めていく必要があります。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
今後も薬剤師に有益な情報の発信に努めていきますのでよろしくお願いします。
